桜開花を待ちながら桜グラノーラを焼く

朝ごはんのために作り続けているグラノーラは、スパイスたっぷりで作るのが定番だ。たまに気分を変えてココア味やピーナッツバター味を作ったとしても、すぐに定番に戻る。例外は桜待ちの季節。 気が早い年なら立春を過ぎてすぐの頃に。気がついたら2月が終わっていたなんて年でも、3月になれば早々にグラノーラを桜味にする。そして桜前線が私の住んでいる横浜を通り過ぎ、そろそろ東北のほうで咲くと聞くまで、桜グラノーラを焼き続ける。
ニュースでしきりに開花予想が繰り広げられるけれど、日にちはさほど気にしていない。私の役割は、その年のペースで咲いてくれた桜を、めいっぱい愛でるだけ。日付は重要ではない。ただ、朝、明るくなる時間が早くなり、日が沈む時間も遅くなり、もうすぐあちらこちらの山が薄桃色に染まるという期待。その変わり目の感覚が好きなのだと思う。

今年もまた、シーズン初の桜グラノーラを焼いた。塩漬けの花がゆっくりと水で戻る様子は、雪が溶けて花がひらく姿さながら。丁寧に花の水気を切ったら、立派すぎる茎や花が取れてしまったガクを取り分けて刻んでおく。この時期にしか出回らない桜エッセンスも加える。エッセンスやフレーバーは、どこのメーカーのを使うかで仕上がりの香りが大きく変わってくるから、色々と試してみてほしい。私は他の材料もまとめて買う Tomiz のものにしている。
定番のグラノーラにはホールのアーモンドやくるみを入れるところを、桜グラノーラにはスライスアーモンドと決めている。焼いた桜の花のサクサク感とスライスアーモンドの薄さがちょうどよく合う。桜の繊細さも邪魔しない。レシピ本にも載せた通り、アーモンドの一部を白胡麻に変えて作ることも多い。あんな小さな粒々なのに存在感抜群で、食べるたびに「ああ、胡麻も入れて正解だった」と毎回新鮮な驚きがある。
グラノーラに添えるヨーグルトは最近ビタントニオのヨーグルトメーカーで自家製にしている。使う牛乳とヨーグルトによって仕上がりの味が全く違うものだから、何種類も試してみた。今一番のお気に入りは、タカナシ牛乳 3.6 (横浜工場発)と森永のパルテノプレーン砂糖不使用の組み合わせ。桜グラノーラにも合う、酸味の少ないヨーグルトができる。
明るいけれど雲の多い3月の空を見ながら朝ごはんを用意する。桜グラノーラをひとすくい、ふたすくい。
これはクリスマスで言うアドベントの時期なのかもしれない。本番を心待ちにしながらツリーを用意したり、シュトーレンを食べたり、アドベントキャンドルを灯したり。その儀式が桜待ちの季節にもそっくりそのまま当てはまる。ツリーを用意する代わりに、部屋の片付けや物の入れ替えなどを毎年決まってこの時期にしている。春本番に向けて、余分なものを一つずつ手離していく感覚。クリスマスのグリーンや花を用意する代わりに、春の軽やかなお花を用意する。桃の節句がお花を買う良い機会。
そしてシュトーレンの代わりになっているのが、私にとっては桜グラノーラなのだ。
桜グラノーラはレシピ本 Bake Small, Celebrate Big の p.11 に掲載しています。
